頸椎症性脊髄症

a.病態と神経ブロックの適応

頸部脊柱管内で脊髄が徐々に圧迫されて生じる病態で,脊髄の障害部位によりI型(脊髄中心部障害),Ⅱ型(I型+後側索部障害),Ⅲ型(Ⅱ型+前側索部障害)の3型に分類される.その型によって,四肢のしびれ,巧緻運動障害,歩行障害,勝胱・直腸障害,疼痛,感覚障害,神経反射異常などが出現する.

治療は非ステロイド性抗炎症薬,中枢性筋弛緩薬やプロスタグランジンE1(PGE1)製剤を用い,温熱療法や頸部筋群の等尺運動による筋力増強訓練を行ない,頸椎装具を使用する.神経ブロックは疼痛,しびれに対して行なう.保存的治療を行なっても症状改善がみられず,日常生活に支障のある場合や症状悪化がみられる場合は手術療法の適応となる.手術時期を逸すると不可逆的となるため,正確な症状把握と診断が重要である.

b.神経ブロック治療指針

①星状神経節ブロック:頸髄の微小循環を改善する目的で,急性期(1~2ヵ月間)は3~4回/週の頻度で行ない,その後は1~2回/週程度とする.

②頸部硬膜外ブロック:根症状や局所症状が強い場合には2~3回/過の頻度で行なう.疼痛が強い場合は入院が望ましく,脊柱管の狭小化により硬膜外カテーテルを挿入すると症状悪化の危険性があるので,1回注入法で連日行なう.

③神経根ブロック:頸部硬膜外ブロックで改善しない根症状に対して,局麻薬にステロイドを添加して行なう.神経根損傷の危険性があるので,10日から14日に1回の頻度で,3回程度までとする.

④トリガーポイント注射:頸部や肩などの圧痛点や筋緊張部位に対して,3~4回/週の頻度で行なう.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋