腰椎分離すべり症

a.病態と神経ブロックの適応

椎間関節突起間部に分離があるものが分離症で,分離部が前方にすべっているものを分離すべり症という.椎間関節突起間部が長期間にわたる過負荷によって疲労骨折を起こして分離し,更に椎間板の変性が加わり椎体の支持組織としての機能が破綻して,上位椎体が下位椎体に対し前方にすべりを生じる疾患である.分離症では無症状のこともあるが,すべりの程度が大きくなると,椎間孔の狭小化や硬膜管の圧迫によって神経根と馬尾が圧迫されて,腰・殿部痛,根性坐骨神経痛,馬尾神経障害,間欠性跛行,下肢筋力低下,勝胱・直腸障害などの脊柱管狭窄症状が生じる.

症状が軽度なものでは非ステロイド性抗炎症薬,中枢性筋弛緩薬を適宜使用し,理学療法や運動療法を行ない,腰椎装具を使用する.神経ブロック療法は.病態に応じて組み合わせて行なう.下肢筋力低下や膀胱・直腸障害などの重症例では手術療法を考慮する.

b.神経ブロック治療指針

①腰部硬膜外ブロック:1~2回/週の頻度で行なう.14日に1回程度,局麻薬にステロイドを添加すると鎮痛効果が良好となる.疼痛が強い場合は入院が望ましく,連続注入法を1~2ヵ月間の目安で行なう.

②神経根ブロック:神経根症状の強い時に行なう.なお神経根損傷の危険性もあるので,10日から14日に1回の頻度で,3回程度までとする.神経根性の間欠性跛行にも有効である.

③後枝内側枝ブロック:当該椎間関節を挟む上下の後枝内側枝をブロックする.効果が一時的な場

合は,後枝内側枝高周波熱凝固法を考慮する.

④腰部交感神経節ブロック:神経根,馬尾の血流を増加させて,間欠性跛行に有効な場合があるので本ブロックを考慮する.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋