坐骨神経痛

a.病態と神経ブロックの適応

坐骨神経は第4,5腰神経根,第1~3仙骨神経根とで形成され,梨状筋下孔を通過し骨盤腔から出て,総腓骨神経系と脛骨神経系に分かれて下肢に分布する.この走行途中で圧迫,絞扼などにより障害されると支配領域に放散するいわゆる坐骨神経痛が起こる.原因としては,腰椎椎間板ヘルニア,変形

性脊椎症,脊柱管狭窄症など脊椎疾患に起因する根性坐骨神経痛が多く,その他として絞扼性神経障害(梨状筋症候群,足根管症候群,モルトン病)や外傷性障害などがあげられる.

治療は非ステロイド性抗炎症薬,中枢性筋弛緩薬,末梢神経代謝改善薬,末梢血行改善薬の投与と理学療法を行なう.神経ブロックは病態に応じて行ない,下肢筋力低下などの重症例では手術療法の適応となる.

b.神経ブロック治療指針

①腰部(または仙骨部)硬膜外ブロック:急性期(1~2ヵ月)は3~4回/週の頻度で行なう.神経根の刺激症状がみられる場合は,1~14日の間隔でステロイドを添加する.疼痛が強い場合は入院が望ましく,1~2ヵ月間を目安に持続注入法を行なう.鎮痛が不十分な場合は,局麻薬の間欠注入を加え,また慎重にモルヒネ(4~5mg/日)やブプレノルフィン(0.2~0.3mg/日)などを添加して持続注入する.

②神経根ブロック:神経根症状の強い時に行なう.神経根損傷の危険性もあるので,10~14日に1回の頻度で.3回程度までとする.

③末梢神経ブロック:障害部位の中枢側でブロックする.梨状筋症候群では殿部で坐骨神経ブロック,足根管症候群では後脛骨神経ブロック,モルトン病では足底神経ブロックを選択する.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋