翼口蓋神経痛

A.病態と神経ブロックの適応

Sluder’s neuralgiaとも呼ばれ,女性に多く,片側の鼻根部や内眼角から眼球,鼻,頬骨,上顎歯,口蓋・咽頭などに放散する発作性疼痛を特徴とする.疼痛は一日に何回も起こり,くしゃみで増悪し,結膜充血,流涙,鼻汁過多,唾液分泌過多など自律神経症状を伴うことが多い.副鼻腔の炎症や鼻粘膜の腫脹などによる翼口蓋神経節への刺激が原因として考えられている.

翼口蓋窩の深部にある翼口蓋神経節は,鼻腔の加湿ならびに涙腺の分泌機能を調節する副交感神経節であり,さらに感覚神経(上顎神経)や交感神経(内頸動脈叢)とも連絡している.すなわち自律

神経症状の有無に関わらず,顔面深部の疼痛には翼口蓋神経節が関与する可能性があり,蝶形骨洞の底部からVidian神経が走向する翼突管が翼口蓋寓につながるので,これらの感染や炎症が波及して翼口蓋神経痛が起こるとも考えられている.

治療は非ステロイド性抗炎症薬や酒石酸エルゴタミン製剤を用いるが効果はあまり期待できない.

神経ブロック療法としては,翼口蓋神経節ブロックが重要で,本ブロックによって症状の消失がみられれば確定診断にもなる.

b.神経ブロック治療指針

①翼口蓋神経節ブロック:局麻薬で3~4回行ない,効果が一時的な場合は,神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法でのブロックを考慮する.

②星状神経節ブロック:急性期(1~2ヵ月間)は3~4回/週の頻度で行ない,その後は1~2回/週程度とする.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋