一般的注意事項

ペインクリニックは,文字通り疼痛を主訴とする疾患の診療部門である.しかし,その診断・治療の手法として中心となるのが,神経ブロック法であるので,神経ブロック法が有効と考えれば,痛みとは関係のない疾患でも治療対象としている.

ペインクリニックの主たる治療法である神経ブロック法とは,「脳・脊髄神経や交感神経節の近傍に針を刺入して,局所麻酔薬または神経破壊薬を用いて化学的に,あるいは高周波熱凝固法や圧迫などによって物理的に,神経機能を一時的にまたは長期的に遮断する方法」と定義される.神経ブロック法は教科書で見ると一見簡単そうであるが,片手間に会得できるものではなく,一定の修練が必要である.

神経ブロックの施行にあたっては,疼痛治療に関する専門的知識を身につけるとともに,起こりうる合併症には速やかに対処する技量が必要である.特に神経破壊薬や高周波熱凝固法などで神経組織を破壊する場合には,極めて正確に行う必要があり,高度の技術修練が要求される.

治療室には,神経ブロックが行いやすく,ブロック後の安静を保ちやすい処置台と神経ブロック後の監視に必要な何らかのモニター(血圧計など),さらに合併症が起こった時など緊急事態に対応するために,酸素吸入,人工呼吸,吸引などの設備が必須である.

日本ペインクリニック学会では認定医指定研修施設および認定医制度を設けている.

なお神経ブロック療法以外の治療法としては,薬物療法や理学療法などに加えて,ボツリヌストキシン療法,施設によっては胸腔鏡下交感神経遮断術,経皮的髄核摘出術,疼痛除去用脊髄電気刺激装置植込術,エピドラスコピー,経皮的椎体形成術などの手術療法やそれに準ずる治療法も用いられている.

ペインクリニックで行われている治療に対して,適応の検討とインフォームドコンセントが必要である.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋