仙腸関節症

a.病態と神経ブロックの適応

仙腸関節は不動関節と可動関節の組み合わせからなり,関節の大部分は靭帯結合で可動性を持っており,小さい関節の割には大きな荷重を受けているため,外傷や妊娠,分娩などの直接的な原因のほかに,腰椎疾患による不自然な姿勢によっても障害されやすい.過剰な負荷がかかることにより,早期に軟骨の変形破壊が生じ,変形性関節症を引き起こす.

仙腸関節性腰痛の特徴は,疼痛域が仙腸関節裂隙の外縁部にあることで,腰痛というよりは殿部痛を呈する.仙骨外側緑に沿って3cmほどの幅で帯状の領域を中心に疼痛を訴え,関節部に一致して圧痛が認められ,鼠径部や大腿後面,膝から足趾にかけてあるいは下腹部への関連痛を伴うこともある.疼痛は起立や歩行で悪化し,患側を下にした側臥位でも強くなるが,仰臥位になると軽快する.

仙腸関節誘発テストとしてNewtonテストやGaenslenテストなどがある.単純Ⅹ線写真では仙腸関節裂隙の狭小化や骨化が,CTでは関節の変形や不整がみられる.

治療としての神経ブロックは変形性関節症に準じて行なう.

b.神経ブロック治療指針

①仙腸関節ブロック*:透視下で関節腔内に刺入し,造影剤注入により針先位置を確認して,局麻薬とステロイドの混合液3~5mlを注入する.1回/週の頻度で,4~5回行なう.(*厳密には関節内注射である.)

②トリガーポイント注射:2~3回/週の頻度で,圧痛点に行なう.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋