顔面けいれん,眼瞼けいれん

a.病態と神経ブロックの適応

片側性に顔面筋が不随意収縮する疾患で,下眼瞼部から始まり,徐々に頬筋,口輪筋へと波及し,ときに眼輪筋の収縮持続によって開眼困難状態になることもある.顔面神経のrootexitzoneが微小血管(まれに腫瘤)で圧迫されて,顔面神経の被刺激性が克進し,異常興奮が顔面神経核に伝播して顔面筋の不随意運動が起こると考えられている.顔面神経を圧迫する血管には,後下小脳動脈,前下小脳動脈,椎骨動脈などがあげられ,薬物療法は無効であり,開頭下での微小血管減圧術が根冶的治療となる.

神経ブロック療法あるいはボツリヌストキシン療法は侵襲が少なく,重篤な心肺系合併症を有して手術危険度が高い場合,対側の難聴を有する場合,あるいは音楽を職業とする場合などでは特に適応となる.ただし多くは数ヵ月間で再発するので繰り返しの治療が必要になる.

b.神経ブロック治療指針

①顔面神経ブロック:次の3つの方法から選択する.

(1)顔面神経幹ブロック法:まず穿刺圧迫法で行なう.不十分な場合には微量の局麻薬(0.03ml以下)で効果を確認後,同量のアルコールを用いる(有効期間は平均10ヵ月).

(2)顔面神経末梢枝ブロック:顔面神経の分枝のうち,眼輪筋を支配する側頭枝をブロックする.

0’Brien法と頬骨弓直下法があり,局麻薬0.3~0.5mlで効果を確認後.同量のアルコールを用いる(有効期間は2~6ヵ月).

(3)顔面神経高周波熱凝固法:顔面神経幹もしくは顔面神経末梢枝を50℃,10秒間の熱凝固する.

有効期間はアルコールブロックと同等で,合併症はより少ない.

C.注射療法

①ボツリヌストキシン療法:けいれんのみられる眼輪筋や頬筋へ,一部位あたり1.25~2.5単位を注射し,1回の治療は30~50単位までにとどめる(有効期間は3~4ヵ月).

F-17-2 眼瞼けいれん

a.病態と神経ブロックの適応

眼輪筋の強直的な収縮が反復して起こり開眼困難をきたす疾患で,原因不明の眼瞼けいれん,Meige症候群,あるいは末梢性顔面神経麻痺の後遺症としての病的共同運動などがある.本態性眼瞼けいれんやMeige症候群では両側性に起こるため日常生活に重大な支障をきたす.

微小血管減圧術の適応はなく,抗不安薬,抗うつ薬,抗ドパミン薬.抗コリン薬などを単独もしくは組み合わせて用いるが,効果は一定でない.神経ブロック療法あるいはボツリヌストキシン療法が有用である.

b.神経ブロック治療指針

①顔面神経末梢枝ブロック:顔面神経の分枝のうち,眼輪筋を支配する側頭枝をブロックする.

0’Brien法と頬骨弓直下法があり,局麻薬0.3~0.5mlで効果を確認後,同量のアルコールを用いる(有効期間は2~6ヵ月).

C.注射療法

①ボツリヌストキシン療法:けいれんのみられる眼輪筋や頬筋へ,一部位あたり1.25~2.5単位を注射し,1回の治療は30~50単位までにとどめる(有効期間は3~4ヵ月).

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋