高周波熱凝固法

高周波熱凝固法とは,目的神経に高周波熱凝固を行う針を誘導し,高周波電流を通電する方法である1,2).針先端の非絶縁部から放射される高周波電流のエネルギーは,組織の水分子を振動させ,発生した熱が組織の蛋白を凝固させる.エネルギーは限局した範囲しか到達しないので,針の位置が適切であれば目的神経以外の組織破壊は軽微である.流体は振勤しにくいので,血管内では熱が発生せず,血管損傷の可能性は低い.針の非絶縁部のサイズ,凝固温度・時間などの設定により,神経破壊の程度を調節できる.

1.機序と生理

高周波電流による凝固巣は,凝固針の非絶縁部を中心軸とする円錐形で,針の先端を超える凝固巣はわずかである.凝固巣の大きさは,非絶縁部の長径と凝固温度で決まる.22G非絶縁部4mm針では,80~85℃で直径約2mm,90~95℃で直径約3mmの凝固巣ができる3).凝固巣が大きいほどその完成に時間を要するが,凝固時間は凝固巣のサイズには影響しない4).

針先が神経に接触するだけでは熱凝固の効果が得られなく,目的神経が円錐形の凝固巣の範囲内にあることが必要である3).

痛みを伝える神経線維のみを選択的に破壊することが可能との見解があるが5),一方,すべての神経線維が破壊されるという見解もある6).頸部神経根の熱凝固では低温でも有効であり7),至適凝固

温が検討されている8).

2.手技1,2,4,9)および施行上の注意

1)機材

高周波熱凝固装置と電極キットが必要である.アースを患者の体に貼付して閉鎖回路とする.

非絶縁部のサイズを変えたディスポーザブルの凝固針が市販されている.

2)針の誘導

三叉神経浅枝を除き,通常はⅩ線透視下で神経へ針を誘導する.低頻度刺激で支配筋のtwichを,高頻度刺激で疼痛の再現をみて,針先の位置を確認する.なお必要に応じ,造影所見の確認もおこなう.

3)熱凝固,高周波療法の施行凝固温度・時間を設定して,少量の局麻薬で麻酔後施行する(40-90℃,90-180秒間).予想外の部位の熱感,疼痛が認められたら,針の位置や凝固条件を再確認する.

4)術後観察

施行部位・施行内容によって,30分~1時間程度は安静臥床とし,2時間の経過観察を要する.

局所麻酔による手足のしびれ・脱力や,過量投与による気分不快が生じることがあるので,更に,患者の状況に応じて安静時間を延長する.

3.合併症は1,2,4,9,)

1)一般的な合併症

穿刺にともなう感染,出血があり得る.穿刺部痛がときにみられる.

2)本法に特徴的な合併症アースを密着させないと,その部分で火傷することがある.針の絶縁部が剥離していると,その部分でも熱を発するので注意を要する.凝固条件によっては,感覚障害,運動障害が起こりうる.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋