脊髄損傷後疼痛

a.病態と神経ブロックの適応

外傷に限らず,多発性硬化症,脊髄空洞症などで脊髄が非可逆的な損傷を受けると,障害髄節以下の感覚・運動麻痺が生じ,損傷部位の上位ニューロンが異常に興奮することによって,感覚正常域と感覚脱失域の境界部に帯状の痛みが発生する.麻痺領域に幻肢痛様の痛みが生じることもある.脊髄損傷には完全型と不完全型があるが,完全型損傷の痛みに対する治療成績は良くない.

神経ブロックは,損傷部位の上位ニューロンの異常興奮を抑制する目的で,頸髄レベルであれば星状神経節ブロックを,胸・腰髄レベルでは当該領域の硬膜外ブロック,胸・腰部交感神経節ブロックを考慮する.

b.神経ブロック治療指針

①星状神経節ブロック:Th3より上位の脊髄障害に対して,治療開始約1カ月間は3~4回/週

の頻度で,その後は維持療法として1回/週程度で行なう.

②硬膜外ブロック:障害レベルの直上の高さで,2~4回/週の頻度で行ない,効果によって増減する.

重症では入院が望ましく,持続法で1~2ヵ月間程度を目安に継続する.

③交感神経節ブロック:硬膜外ブロックの効果が一時的の場合は,神経破壊薬または高周波熱凝固法を用いて,障害部位の直上レベルでの交感神経節ブロックを考慮する.

C.手術療法

①電気刺激鎮痛法:大脳皮質野,脳深部の電気刺激法を考慮する.疼痛除去用脊髄刺激装置植込術は不完全型損傷例では有効な場合もある.

--

※「ペインクリニック治療指針」から抜粋