腕神経叢引き抜き損傷
a.病態と神経ブロックの適応
a.病態と神経ブロックの適応
C5-Th1の前・後根のすべてもしくは一部が脊髄より引き抜かれることにより,上肢の運動麻痺,感覚脱先,自律神経障害などを呈し,感覚が脱失した部分に強烈な痛みが生じる.痛みの発生機序としては,一次ニューロンの引き抜きにより脊髄後角の二次ニューロンへの入力が遮断され,二次ニューロンの興奮性が増して,過剰な自発発射を起こすことが考えられている.
神経根が頸髄から引き抜かれる節前損傷の場合には予後不良で,麻痺の回復は期待できない.痛みに対しては,抗うつ薬,抗てんかん薬,NMDA受容体括抗薬などを用いるが,決定的なものはなく,神経ブロックの効果も一定でない.
b.神経ブロック治療指針
b.神経ブロック治療指針
①星状神経節ブロック:治療開始当初は3~4回/週の頻度で約1ヵ月行ない,その後は維持療法として1回/週程度の頻度で行なう.
②頸部・上胸部硬膜外ブロック:引き抜き損傷直後から行ない,十分な除痛をはかる.重症では入院が望ましく,持続法で1~2ヵ月間程度を目安に継続する.
③交感神経節ブロック:星状神経節ブロックあるいは頸部・上胸部硬膜外ブロックの効果が一時的な場合には,神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法で胸部交感神経節ブロックを考慮する.
C.手術療法
C.手術療法
①胸腔鏡下交感神経遮断術:星状神経節ブロックや胸部交感神経節ブロックの効果が一時的な場合に,より確実性と長期的効果を求めて考慮する.
②その他:脊髄後根進入部破壊術は本症の痛みには効果的であるが,長期予後に関しては検証を要する.他に脊髄,大脳皮質野や脳深部などへの刺激装置植込術があげられるが,その効果は一定ではない.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋