胸椎椎間板ヘルニア

a.病態と神経ブロックの適応

胸椎椎間板の退行性変性を基盤に,髄核が線維輪の破綻部位から後方に脱出し,神経根や硬膜,脊髄を圧迫した病態であり,発生頻度は低いが,脊髄症や胸背部痛の原因として念頭におくべきである.

神経学的所見とMRI,椎間板造影,脊髄造影などの画像診断で確定される.

胸背部痛と分節的な感覚低下など神経根症のみを呈する場合は神経ブロック療法の適応となるが,下肢のしびれ・脱力・痙性歩行など脊髄症状の明らかな場合は手術療法が必要となる.

b.神経ブロック治療指針

①胸部硬膜外ブロック:神経根症状や胸背部痛が強い場合には2~3回/週の頻度で,2~4週ほど行なう.14日に1回程度,局麻薬にステロイドを添加すると鎮痛効果が良好となる.疼痛が強い場合は入院が望ましく,1~2ヵ月間を目安に局麻薬を用いた連続注入法で行なう.鎮痛が不十分な場合は局麻薬の間欠的注入を併用する.硬膜外カテーテル挿入によって症状が悪化することがあるので注意する.

②神経根ブロック:硬膜外ブロックで胸背部痛が軽減しない場合に.局麻薬にステロイドを添加して行なう.神経根損傷の危険性もあるので.10日から14日に1回の頻度で,3回程度までとする.

③トリガーポイント注射:胸背部に圧痛点や筋緊張部位がみられる場合に,2~3回/週の頻度で行なう.

C.注射療法

①椎間板内ステロイド注入:椎間板造影検査の際にステロイドと局麻薬の混合液を注入する.椎間板線維輪最外層や後縦靱帯に分布する脊椎洞神経由来の疼痛治療に有用である.

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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋