四肢血行障害(閉塞性血栓血管炎,閉塞性動脈硬化症,レイノー症候群など)
a.病態と神経ブロックの適応
閉塞性血栓血管炎や閉塞性動脈硬化症などによる四肢血行障害では,病状進行とともに間欠性跛行が悪化し,安静時痛を伴うようになり,関連部位の潰瘍,壊疽が起こる.喫煙は増悪因子であり,特に閉塞性血栓血管炎では必ず禁煙させ,糖尿病あるいは脂質代謝異常などの合併症がある場合にはそれらの治療を併せて行なう.レイノー症候群は寒冷刺激により血行障害が増強されるが,その原因は確定されていない.基礎疾患の除外が重要である.
これら末梢血管の血行障害に対する神経ブロック療法は,鎮痛と血行改善を目的として行なう.また,脊髄刺激装置植込術も同様の効果を示す.Fontaineの分類によるI度(冷感,しびれ感,チアノーゼ)とⅡ度(間欠性跛行)は外来治療でもよいが,Ⅲ度(安静時痛)とⅣ度(潰瘍,壊疽)では入院治療が望ましい.
b.神経ブロック治療指針
1)-1.上肢の血行障害の程度と神経ブロック治療指針
(1)Fontaine Ⅰ,Ⅱ度
①星状神経節ブロック:2~3回/週の頻度で行ない,症状に応じて増減する.
②頸部・上胸部硬膜外ブロック:1~2回/週の頻度で行ない,症状に応じて増減する.
③胸部交感神経節ブロック:上記ブロックで効果不十分な場合には,神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法による胸部交感神経節ブロックを考慮する.
(2)Fontaine Ⅲ.Ⅳ度
①星状神経節ブロック:1回/日の頻度で行ない,症状に応じて増減する.
②頸部・上胸部持続硬膜外ブロック:頸部・上胸部での持続硬膜外ブロックを連続注入法で行なう.鎮痛不十分な場合には,局麻薬の間欠的注入を加え,また慎重にモルヒネ(4~5mg/日)やブプレノルフィン(0.2~0.3mg/日)を添加して持続注入する.
③胸部交感神経節ブロック:潰瘍,壊死を伴う場合や痛みが強い場合は,持続硬膜外ブロックを行ないながら,できるだけ早期に神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法で行なう.
1)-2.手術療法
①胸腔鏡下交感神経遮断術:胸部交感神経節ブロックより確実性の面で優れる.
②疼痛除去用脊髄刺激装置植込術:刺激電極を頸椎硬膜外腔内の適正位置に留置し,ジェネレーターを植え込んで通電刺激を行なう.
2)-1.下肢の血行障害の程度と神経ブロック指針
(1)Fontaine Ⅰ,Ⅱ度
①下胸部・腰部硬膜外ブロック:下胸部から腰部での硬膜外ブロックを1~2回/週の頻度で行ない,症状に応じて増減する.
②腰部交感神経節ブロック:硬膜外ブロックで効果不十分な場合には,神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法で行なう.
(2)Fontaine Ⅲ,Ⅳ度
①下胸・腰部持続硬膜外ブロック:下胸部から腰部での持続硬膜外ブロックを連続注入法で行なう.鎮痛不十分な場合には,局麻薬の間欠的注入を加え,また慎重にモルヒネ(4~5mg/日)やブプレノルフィン(0.2~0.3mg/日)を添加して持続注入する.
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②腰部クモ膜下ブロック:痛みが強い場合には,1回/週の頻度で行ない,症状に応じて増減する.
③腰部交感神経節ブロック:神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法を用いて早期に行なう.
2)-2.手術療法
①疼痛除去用脊髄刺激装置植込術:刺激電極を下胸部硬膜外腔内の適正位置に留置して,ジェネレーターを植え込んで通電刺激を行なう.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋