痛みのブロック注射

痛みのブロック注射とは

神経のそばにお薬を入れて,バランスをとるお注射です.神経ブロック・トリガーポイント注射などもこれに含まれます.

注射する場所によって,いろいろな種類があります.

神経のそばにお薬を入れることで,はり薬・飲み薬・点滴などよりも少ないようで確実に効果を出すことがあります.

痛みのブロック注射の効果は,痛みの悪循環をブロックすることです.

痛みをお薬の力でねじふせるのは,痛みのブロック注射ではなく麻酔です.

熱いお湯よりぬるま湯のほうが湯冷めしにくいように,少量の弱いお薬を使うブロック注射のほうが効果が高いです.

1回のお注射で,のんびり温泉に浸かったのと同じような調整効果があります.

薬は2~3時間で効果が切れますが,ブロック注射による効果は数日からひと月以上持ちます.

前の注射の効果が残っているうちに,次の注射をすることで効果が積み重なり,自然治療力が勝ってきます.

そして痛みの悪循環がなくなり,いつしか受診間隔も伸び,ブロック注射も不要となります.

痛みがきっかけでブロック注射は始まりますが,その痛みを治すのではなく自ら痛みを治す力を高めるのが目的です.

あまり痛くないときや痛みとは違う場所(例えば足が痛いのに腰,腕が痛いのに首)にお注射することもあります.

また痛みが強い時はブロック注射の薬を強めるのではなく通院頻度を上げて調整します.

ブロック注射も他の診療行為と同じく慎重に計画的に行います.

痛みの悪循環

痛みがこじれて,痛みが治らなくなることをいいます.

  1. 痛い⇒自律神経が乱れる⇒血の巡りが悪くなる⇒傷の治りが悪くなる⇒痛い場所がむくみ,痛みを出す物質がたまる⇒骨や筋肉がやせる⇒冷えて過敏になる⇒筋肉がこる⇒ますます痛い

  2. 痛い⇒気が滅入る⇒痛みを強く感じるようになる⇒ますます痛い

  3. 痛い⇒動きたくない⇒筋力が落ち,関節が固くなる⇒体のバランスが崩れる⇒痛い場所を支えられなくなる⇒ますます痛い

  4. 痛い⇒イライラして他人にあたる⇒周りの人が相手をしてくれなくなる⇒孤独・不安⇒ますます痛い

  5. 痛い⇒いったん痛みがよくなっても,また痛くなるのではと不安⇒ますます痛い

痛みのブロック注射の種類

硬膜外ブロック

背骨と神経の間にある硬膜外腔(こうまくがいくう)にお薬を入れるブロック注射です.

ほとんどの神経が背骨を通るので,その症状を伝える神経の通り道に合わせて注射する場所を決めます.

下肢痛⇒腰椎

腰痛⇒下胸椎

胸腹部痛⇒上胸椎

上肢痛⇒頸椎・上胸椎

などのように加減します.その調整効果はブロック注射の中で最もよい部類に入ります.

注射したその日は体がほてってドキドキしたり(湯渡り),痛みがちょっと増したり(もみ返し)しますが,翌日か翌々日にじっくりと効いてきます.その調整効果は1回の注射で1か月以上続きます.お薬は2.3時間で切れるてるのに効果が長続きするということは,お薬でねじ伏せているのではなくご本人の自然治癒力で良くなってきているということになります.

大後頭神経ブロック

うなじにお注射します.

首から後頭部,頭,目,耳,鼻,口などの痛みに用います.

硬膜外ブロックより早く効きます.

早く効く半面,持続が1週間ほどなので硬膜外ブロックと組み合わせて用います.

肩甲背神経ブロック

肩こりのツボのお注射です.

肩甲骨の頂点,いわゆる肩こりのツボに打つブロック注射です.肩こりや肩こりからくる頭痛,吐き気などに良く効きます.早く効く半面,持続が1週間ほどなので硬膜外ブロックと組み合わせて用います.

肩甲上神経ブロック

肩甲背神経ブロックより少し外側にお注射します.

肩から首,腕にかけての痛みに効果があります.

早く効く半面,持続が1週間ほどなので硬膜外ブロックと組み合わせて用いります.

星状神経節ブロック

首筋にお注射します.

そこには自律神経のうち,血の巡りをよくする交感神経の中枢がありこれをブロック注射でほぐすことで多くの症状に効果があります.頭痛などから首から上の痛み,肩こりや腕の痛み,胸や背筋の痛み,めまいや耳鳴り,吐き気などの自律神経症状,他の治療法では難しい症状にも効果があります.

早く効く半面,持続が1週間ほどなので硬膜外ブロックと組み合わせて用いります.

腰の経仙骨孔ブロック

腰の経仙骨孔にお注射します.

おしりから足にかけての痛みに有効です.

早く効く半面,持続が1週間ほどなので硬膜外部とロックと組み合わせて用いります.

副作用

全てのお注射には,副作用があります.

痛みのブロック注射にもないわけではありません.

組織を傷つけ出血したり,ばい菌が入る可能性があります.

他の点滴や筋肉注射と同じようにこのメリットとデメリットを天秤にかけ,痛みのブロック注射するかどうかを慎重に決めます.

そのため注射をする前に尿や血液の検査,MRIなどの画像検査をお勧めします.

痛みのブロック注射は温泉に似ています.

1週間,湯治をしたのと同じくらいの調整効果があります.

血の巡りが良くなるので少しのぼせたり,どきどきするなど湯渡りに似た症状が出ることがあります.

またマッサージ後のもみ返しのように,痛みが1~2日強くなることがあります.

湯渡りやもみ返しは体の負担のように見えますが,そこから戻る力を使って治す主作用ともいえます.

10人に1人くらいは湯渡りやもみ返しが強く出ることがありますが,多くの方は何も負担を感じないか,むしろ血の巡りが良くなり,こりがほぐれ,症状が良くなったと実感される方もいます.

痛みのブロック注射は痛みを直接止めるのではなく,患者様の自然治療力を高め,じっくり根っこから症状をよくする治療法です.

1回ごとに良い悪いを決めるのではなく,計画的に治療を進めていきます.

お注射の痛み

注射ですから痛みはあります.しかしインフルエンザの予防接種よりも痛みは少ないです.