腰椎椎間関節症
a.病態と神経ブロックの適応
椎間関節に起因する腰痛で,可動部分の過可動性と不安定性が椎間関節包の過負荷となり,これら構造の変性と関連痛を引き起こした状態とされる.原因としては,椎間関節捻挫(いわゆるぎっくり腰),関節症性変化,関節包や滑膜の炎症,外傷後の関節内微小骨折などがあげられている.
臨床所見として,後屈制限と後屈時痛,罹患椎間関節に一致した圧痛,圧痛部の軽度の触覚低下,さらに大腿外側への放散痛,棘突起ゆさぶり振動による疼痛などがみられる.急性期には体動不能となるが神経学的所見はなく,慢性期には安静時痛はないが運動により疼痛が増強することなどを特徴とする.
急性期の治療は安静と薬物療法(非ステロイド性抗炎症薬,中枢性筋弛緩薬)を,慢性期には生活指導,体操療法と腰椎装具の装着を行なう.椎間関節ブロックによる疼痛の消失が確定診断に有用であり,急性期の治療法として最も有効である.
b.神経ブロック治療指針
①椎間関節ブロック(関節内注入法と後枝内側枝ブロック法がある)
(1)関節内注入法:透視下に,針先が当該椎間関節内にあることを造影剤注入で確認し,局麻薬とステロイドの混合液1~1.5mlを注入する.
(2)後枝内側枝ブロック法:透視下に,当該椎間関節に分布する上下の後枝内側枝をブロックする.
②後枝内側枝高周波熱凝固法:慢性期で,椎間関節ブロックの除痛効果が一時的な場合は高周波熱凝固法を考慮する.有効期間は6ヵ月程度である.
③腰部硬膜外ブロック:急性期は1回注入法で3~4回/週の頻度で行なう.直接的効果は少ないが,椎間関節症に関連して起こる筋・筋膜性腰痛に有効である.慢性期は1回1~14日程度で行なう.
④トリガーポイント注射:腰部傍脊柱筋に反射性の筋緊張部位や圧痛点がある場合に,2~3回/週の頻度で行なう.
⑤腰部交感神経節ブロック:下位腰椎の椎間関節に分布する感覚神経線維の細胞体は当該分節の後根神経節のみならず上位腰髄にも存在し,交感神経幹・交通枝が求心路の一部となっており,慢性期には本ブロックが有効な例があるので考慮する.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋