レビー小体型認知症

MRIなどで脳に全く異常が見られず,認知症が進むことがあります.そのうち,脳の中にパーキンソンで見られるレビー小体が異常に増えるものをレビー小体型認知症といいます.

どんな症状?

認知症の症状が出る前に,パーキンソン病で見られるような手足の震え,筋肉が固くなる,表情がないなどの症状が見られます.

亡くなったはずの「~さんが来てくれた」などの幻覚を早い段階から訴えることがあります.

幻覚による行動の異常で家族が戸惑います.

他の中核症状と周辺症状は認知症の項目をご覧ください.

無症状が一番怖い

パーキンソン病のような症状が先に出るため,認知症が見落とされることがあります.

●何で気がつくの?

子供の頃に眠りながら歩く,REM睡眠行動異常症(いわゆる夢遊病)が見られることがあります.

歳を取ってから突然変なことを言い,問いただすと幻覚を見ていたことから家族が気づくことが多いです.

パーキンソン病やパーキンソン症候群の治療中に気づくことがあります.

●放っておくと?

認知症は脳の老化でもあるので,自然に治ることはありません.確実に症状が進みます.「~さん,朝飯はまだか」「財布が取られた」などの有名な症状が出る頃には,家庭内がギクシャクし始めます.迷子や交通事故など命に係わるトラブルが起こると,家庭の雰囲気は一気に悪化し,生活が一変します.さらに進めば,自力で生活ができなくなり,寝たきりとなって亡くなります.

どんな検査?

今の時間や場所,周りの状況,物の形が分からないことなどを調べる時計テストをします.

0 A4の白い紙と,フェルトペンを渡します.そこに①~④をかいてもらいます.

①年号年月日

②場所の名前

③自分の名前

④紙の余白いっぱいに丸い針の時計で,10時10分の絵をかいてもらいます.

●血液や尿の検査

メタボなど認知症を悪化させる病気の検査

認知症に似た病気の検査

貧血・肝・腎機能などの一般的なチェック

●画像検査

院内画像検査

エコー検査,レントゲン

院外画像検査

MRI(脳の大きさや血管の詰まり具合,脳梗塞の度合いなど認知症の原因となる部位の特定)

CT(脳血管をMRIより細かく見ます)

心臓交感神経シンチ・PET

●他の検査

認知症の度合いを見るための質問が多数あります.例えば長谷川式認知症スケール(HDS),時計テストなど.

●他の病気と副作用をチェック

検査は安心して診療できるようにするためのおまもりです.他の悪い病気がないか,副作用が出ていないかをチェックするのが第一の目的です.

どんな治療?

●一般的な生活改善

メタボなどの背景となる病気をしっかり治療します.手術などの必要がない限り,入院などを避け環境を一定に保ちます.いつもと同じ生活をしながら,じっくり療養することが大切です

運動中心の生活リズムと食事などのバランス.

●お薬

薬が強く効くので,アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のお薬などを少量から始めます.

●他の治療

徐々に進む症状をなるべく遅らせるよう家庭や外来でリハビリを続けます.

体や頭を使う作業(例えば少し複雑な体操やパズル,漢字や算数ドリル)

診療のながれ

●しらべる

病歴と診察,MRIなどで認知症を確定します.

●ととのえる

2~4週ごと:血液や尿の検査などから,

1~2週ごと:症状や生活の様子から,生活改善の仕方やお薬,リハビリ内容を調整します.

●おちついたら

2~4週ごと:生活改善の確認とお薬とリハビリ.

2~4か月ごと:血液や尿の検査.

半年~毎年:院内画像検査/1~2年ごと:院外画像検査

他には?

ご本人の症状が進むにつれ,少しずつ生活が大変にります.ご家族がご本人に費やせるのは一日に2時間程度です.それ以上では長続きしません.医療だけでなく,介護などを含め地域で支える体制を作ります.

ほどほど,コツコツでだいじょうぶ

日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.