はだに虫がついたやような感じがして,手で払ったら何もついていなかった
雨の粒がおちてきたような気がした.部屋の中で,しかも服をきているのに
糖尿病性末神経障害の初期症状です.
これをきっかけに糖尿病がみつかることもあります.
ひどくなると,手足の感覚がにぶくなり,そこにアリが歩いている感じがしてきます.さらに進むと肌の下に虫がもぐりこむ不快感が出て,痛みが出てくるようになります.この神経痛は一般の鎮痛薬でかえって痛みが増すことがあります.
いったん値上げしたお小遣いを値下げすると子供が不平をいうように,高い血糖に慣れた神経は血糖が下がると痛みます.糖尿病の治療で血糖が下がりはじめたとたん痛みが出た時,何かを食べて血糖を上げるとしずまる.そのためお薬を飲みながら過食がとまらずひいては血糖も上がってきてしまう .. そんな皮肉なことのきっかけになることもあります.
痛みが出るからと言って,血糖を高い状態にしていては糖尿病が悪くなり,糖尿病性神経障害もひどくなります.この悪循環をたちきるためには,神経痛をおさえながらしっかり血糖をコントロールすることです.運動を中心とした規則正しい生活と総カロリーを守り三食きちんととる.だいたんな生活改善と外来での厳密な検査,病態に合った薬物治療,これらがあいまって神経痛は改善しえます.
a.病態と神経ブロックの適応
糖尿病に合併し,糖尿病以外にその原因が認められない神経障害を糖尿病性神経障害と呼ぶ.成因として血管障害説,代謝障害説などが考えられている.症状範囲から手袋型,靴下型と称され,しびれ・感覚障害を主症状とする対称性遠位性多発神経障害型と,痛みあるいは運動麻痺を主症状として単神経障害型である四肢・躯幹神経障害型あるいは脳神経障害型がある.
治療は血糖のコントロールが基本で,薬物としてはアルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット),抗不整脈薬(メキシレチン,リドカイン),抗てんかん薬,抗うつ薬,カプサイシン軟膏などを用いる.
軽症の場合には交感神経節ブロックが神経内の微小循環の改善に効果的であるが,すでに脱神経が起こっている場合には効果がない.
b.神経ブロック治療指針
①星状神経節ブロック:上肢の症状あるいは動眼神経麻痺など脳神経の単神経障害に対して,治療開始当初は約1ヵ月間を目安として2~3回/週の頻度で行ない,その後は維持療法として1回/過程度で行なう.
②硬膜外ブロック:疼痛が激しい時,2~3回/週の頻度で,1~2ヵ月間を目安として行なう.硬膜外カテーテルの留置は易感染性のために好ましくない.
③交感神経ブロック:上肢では星状神経節ブロック,下肢では腰部硬膜外ブロックの効果が一時的な場合は,神経破壊薬または高周波熱凝固法による当該交感神経ブロックを考慮する.
C.手術療法
①胸腔鏡下交感神経遮断術:星状神経節ブロックや胸部交感神経節ブロックの効果が一時的な場合に,より確実性と長期的効果を求めて考慮する.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋