鉄欠乏性貧血

空気中の酸素を肺で受け取り,体中に運ぶのが赤い血,赤血球の働きです.赤血球の赤い血色素ヘモグロビンHbの主成分は鉄です.この鉄が足りなくなるのが鉄欠乏性貧血です.

食べ物に鉄が10mg入っていれば,1mg吸収されます.鉄の消費量は一日1mgなので,これでバランスが取れます.これより入る鉄が少なかったり,出る量が多かったりすると鉄が足りなくなります.

入る鉄が少なくなる原因には,食事をしなかったり,鉄分の多い物を取らなかったり,鉄分のある食べ物を取っても吸収できないことです.

出るのが多い原因には胃腸や腎臓膀胱からの出血,月経があります.

元気のにない手,赤血球が減る鉄欠乏性貧血について診てみましょう.

どんな症状?

冷える,だるい,すぐ疲れる(寝ても眠気がとれない・すぐ眠れるのに熟睡できない),仕事したくてもできない,めまい・動悸がする,かぜなどをひきやすい.

これらの症状が,寝ても起きても起こるのが特徴です.

無症状が一番怖い

貧血になると顔色が悪くなるといわれますが,かなりヘモグロビンが減らないと表情には出ません.むしろ軽く貧血の方が唇が赤く,色白に見えるので顔色がいいように感じます.めまいや動悸などの体の症状が出るころには,かなりひどくなっています.

●何で気がつくの?

典型的な貧血症状があったとしても,本人は検査しようとしないことが多いです.怠け者の自分が悪い,かぜなど他の病気が原因だなどと思ってなかなか受診しません.具合が悪い時に家族から病院にいけと言われて初めて受診する,何かのきっかけで病院にかかった時の血液検査で分かる,また健康診断などで偶然見つかることもあります.

●放っておくと?

自分がしたいことが出来ずだんだん気が滅入ってくる,物事を悪く考えるようになる,家族や周辺の人とぶつかり生活ができなくなるなどの症状が出てきます.

単に具合が悪いだけでなく,体中に酸素が行かないので臓器の生きが悪くなったり,内臓の機能が落ちて亡くなることもあります.

どんな検査?

●血液や尿の検査

ヘモグロビンの量が減る貧血

平均赤血球容積MCVの大きさが小さくなる小球性貧血

血清鉄が足りないことの3つで診断

出血の場所を見極めます.

胃腸:便検査

腎臓膀胱:尿検査

月経過多:お話を聞いて

肝・腎機能などの一般的なチェック

●画像検査

院内画像検査

エコー検査,レントゲン

院外画像検査

CT,MRI

●他の検査

血尿があれば,膀胱鏡などの泌尿器の検査

便鮮血陽性の場合は内視鏡をし,消化管出血がないか調べます

月経過多の場合は婦人科の検査

●他の病気と副作用をチェック

検査は安心して診療できるようにするためのおまもりです.他の悪い病気がないか,副作用が出ていないかをチェックするのが第一の目的です.

どんな治療?

●一般的な生活改善

運動中心の生活リズムと食事などのバランス.

出血が止められるなら止めます.

食べ物やお薬で鉄を補います.

●お薬

鉄剤

●注射

鉄剤

●他の治療

出血を止める

診療のながれ

●しらべる

問診・血液検査より鉄欠乏性貧血を確定します.

出血源を特定します.

●ととのえる

鉄剤を少量から始めて,徐々に増やしていきます.

鉄剤は多すぎると肝臓などにたまり,肝硬変やその他いろいろな障害を起こします.しっかり血液検査をして調整していく必要があります.食材からの鉄の摂取は難しいので,鉄剤と合わせてバランスを取ります.

2~4週ごと:血液や尿の検査などから,

1~2週ごと:症状や生活の様子から,生活改善の仕方やお薬を調整します.

●おちついたら

2~4週ごと:生活改善の確認とお薬.

2~4か月ごと:血液や尿の検査.

半年~毎年:院内画像検査/1~2年ごと:院外画像検査

他には?

鉄は栄養素と体のバランスの目安のひとつでしかありません.これがずれているのは,他のもののバランスもずれているので,健康的な生活を心がけましょう.貧血が治ったからと定期的な検査や生活改善を怠れば,貧血をまた繰り返し,他の病気にもなります.

ほどほど,コツコツでだいじょうぶ

日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.