脳血管性認知症

脳の血のめぐりが悪くなる虚血性脳血管障害や,脳出血で脳の働きが低下していくことを,脳血管性認知症といいます.他の認知症と違い,メタボなどの治療で脳血管性認知症は予防でき,進行をゆっくりにすることができます.

どんな症状?

一部の,無表情であまり話さなくなり,筋肉が固く時に手足が震えるパーキンソニズムと認知症の症状が合わさる点で,レビー小体型認知症に似ています.

その初期は,虚血性脳血管障害で徐々に進んだり,脳卒中後急に進むにせよ,症状は他の認知症と区別がつかないことが多いです.他の中核症状と周辺症状は認知症の項目をご覧ください.

無症状が一番怖い

虚血性脳血管障害は,症状が出た時にはかなり病状が進んでいます.脳塞栓症や脳出血による脳卒中になれば,とりかえしのつかないこともあります.メタボなど脳の血管を痛める病気をしっかり治療することが大切です.

●何で気がつくの?

虚血性脳血管障害の症状が進むとともに認知症が悪くなったり,脳卒中後に認知症が起こり診断がつくことが多いです.

●放っておくと?

認知症は脳の老化でもあるので,自然に治ることはありません.確実に症状が進みます.「~さん,朝飯はまだか」「財布が取られた」などの有名な症状が出る頃には,家庭内がギクシャクし始めます.迷子や交通事故など命に係わるトラブルが起こると,家庭の雰囲気は一気に悪化し,生活が一変します.さらに進めば,自力で生活ができなくなり,寝たきりとなって亡くなります.

どんな検査?

虚血性脳血管障害や脳卒中に伴って認知症が出てくることで,おおよそ診断がつきます.

認知症の検査と虚血性脳血管障害の検査を合わせて行います.

●血液や尿の検査

メタボなど虚血性脳血管障害や認知症を悪化させる病気の検査

認知症に似た病気の検査

貧血・肝・腎機能などの一般的なチェック

●画像検査

院内画像検査

エコー検査,レントゲン

院外画像検査

MRI(脳の大きさや血管の詰まり具合,脳梗塞の度合いなど認知症の原因となる部位の特定)

CT(脳血管をMRIより細かく見ます)

脳シンチ・PET(脳の血の巡りや働きを診ます)

●他の検査

認知症の度合いを見るための質問が多数あります.例えば長谷川式認知症スケール(HDS),時計テストなど.

●他の病気と副作用をチェック

検査は安心して診療できるようにするためのおまもりです.他の悪い病気がないか,副作用が出ていないかをチェックするのが第一の目的です.

どんな治療?

●一般的な生活改善

虚血性脳血管障害の治療をしていきます.

運動中心の生活リズムと食事などのバランス.

●お薬

抗血栓薬(心房細動などの心臓から血栓が飛び脳塞栓症の可能性がある時は,ワーファリンなどの抗凝固薬)

それ以外の動脈硬化(アスピリン,シロスタゾール,プロピトグレルなどの抗凝集薬)

●他の治療

脳動脈硬化症がひどい時,手術(内頚動脈内膜剥離術,脳動脈内ステント留置術)

リハビリ

診療のながれ

●しらべる

病歴と診察,MRIなどで認知症を確定します.

●ととのえる

2~4週ごと:血液や尿の検査などから,

1~2週ごと:症状や生活の様子から,生活改善の仕方やお薬やリハビリ内容を調整します.

●おちついたら

2~4週ごと:生活改善の確認とお薬とリハビリ.

2~4か月ごと:血液や尿の検査.

半年~毎年:院内画像検査・心電図/1~2年ごと:院外画像検査

他には?

脳卒中は脳塞栓症を含む虚血性脳血管障害だけでなく,脳内出血やくも膜下出血なども含みます.

ほどほど,コツコツでだいじょうぶ

日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.