アルツハイマー型認知症

脳が小さくなるのが原因の認知症が,アルツハイマー型認知症です.脳が小さくなる場所は,記憶をつかさどる海馬の近くです.

どんな症状?

初めは記憶障害に始まりますが,何となく生活は成り立ってしまうのでパッと見に認知症とは分かりません.

昔からやっている日常のことは分かるのに,そこに新しいことが入ると全く分からなくなります.物の名前など,細かく質問してみると本当は分かっていないことが多いです.

家族も気づかず見過ごしがちなため,発見が遅れることもあります.

他の中核症状と周辺症状は認知症の項目をご覧ください.

無症状が一番怖い

年齢と共に脳の働きは弱まります.しかし脳は弱い部分を他が補うため,認知症の症状はなかなか出ません.例えば,ボールペンという名前が出てこなくても,これと指させば生活に問題はありません.「何か変だなあ」と本人や家族が気づいた時には,脳の状態はかなり進んでいます.

●何で気がつくの?

家族が「前とはどこか違う」と感じ始めてしばらく経った時,物を置き忘れるなどのエピソードで気づくことが多いです.

メタボなどのかかりつけ医はずっと見ているため,ご家族と同様ご本人の認知症になかなか気づかない場合があります.むしろ,たまたまかぜやけがなどでかかった医院で見つかることがあります.

健診などで脳のMRIを撮り,偶然見つかることもあります.

●放っておくと?

火の不始末など問題行動が起こるようになります.

生活は成り立たなくなり,家族はショック受けます.そのうち寝たきりになります.

どんな検査?

今の時間や場所,周りの状況,物の形が分からないことなどを調べる時計テストをします.

0 A4の白い紙と,フェルトペンを渡します.そこに①~④をかいてもらいます.

①年号年月日

②場所の名前

③自分の名前

④紙の余白いっぱいに丸い針時計で,10時10分の絵をかいてもらいます.

●血液や尿の検査

メタボなど認知症を悪化させる病気の検査

認知症に似た病気の検査

貧血・肝・腎機能などの一般的なチェック

●画像検査

院内画像検査

エコー検査,レントゲン

院外画像検査

MRI(脳の大きさや血管の詰まり具合,脳梗塞の度合いなど認知症の原因となる部位の特定)

CT(脳血管をMRIより細かく見ます)

脳シンチ・PET(脳の血の巡りや働きを診ます)

●他の検査

認知症の度合いを診るための質問が多数あります.例えば長谷川式認知症スケール(HDS),時計テストなど.

●他の病気と副作用をチェック

検査は安心して診療できるようにするためのおまもりです.他の悪い病気がないか,副作用が出ていないかをチェックするのが第一の目的です.

どんな治療?

●一般的な生活改善

メタボなどの背景となる病気をしっかり治療します.手術などの必要がない限り,入院などを避け環境を一定に保ちます.いつもと同じ生活をしながら,じっくり療養することが大切です.

運動中心の生活リズムと食事などのバランス.

●お薬

コリン・エステラーゼ阻害薬(アリセプトなど)

NMDA受容体拮抗薬(メマリーなど)

●他の治療

徐々に進む症状をなるべく遅らせるよう家庭や外来でリハビリを続けます.

体や頭を使う作業(例えば少し複雑な体操やパズル,漢字や算数ドリルなど)

診療のながれ

●しらべる

病歴と診察,MRIなどで認知症を確定します.

●ととのえる

2~4週ごと:血液や尿の検査などから,

1~2週ごと:症状や生活の様子から,生活改善の仕方やお薬,リハビリ内容を調整します.

●おちついたら

2~4週ごと:生活改善の確認とお薬とリハビリ.

2~4か月ごと:血液や尿の検査.

半年~毎年:院内画像検査/1~2年ごと:院外画像検査

他には?

ご本人の症状が進むにつれ,少しずつ生活が大変になります.ご家族がご本人に費やせるのは,一日に2時間程度です.それ以上では長続きしません.医療だけでなく,介護などを含め地域で支える体制を作ります.

ほどほど,コツコツでだいじょうぶ

日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.