シンドロームY

シンドロームY

病名・原因にこだわると行き詰まる

シンドロームY


どんどん症状が悪くなるのに,どの医者も病名が分からない.

何科でも「正常・大したことはない」なんて絶対納得できない.

とうとう「原因不明,うちでは無理」と見捨てられた.

典型的なシンドロームY(以下Y)です.複合因子症候群とも呼ばれ,診療不能の最大誘因であるこの病態を考えてみましょう.

見はなされ,たらいまわし

【症例】50代女性.若い頃から腰や膝が痛み市販薬を飲んでいた.最近,薬が効かなくなり整形外科に行き鎮痛薬を求めましたが「背骨や関節の変形は年相応.持病の糖尿のせいでは?」と内分泌内科紹介.しかし「血糖は高くないので治療不要.更年期障害では?」と婦人科紹介.そこでも「閉経は老化だから」と無治療でした.

1+1=3

複数の原因が絡みあい不可解な症状(異型症)となるのがYです.

個々の原因が些細であるほど,狭い分野しか診ない専門家は時に「自分の診療科的には正常」と切り捨てるのです.

原因は必ず複数ある

所詮,人類が勝ち得た医学知識なぞ微々たるもの.スッキリした診断名がつくのは急性病のごく一部にすぎません.病気には明快な病名=原因が唯一決まる…と思い込むと,早晩,行き詰まります.


いくつもの病因が主役・脇役・引き立て役となり病気を演じていると考えるのが賢明です.一つの病名に決るのは,それがたまたま一人舞台の時です.


癌が治療可能に、老化が難病に


癌の末期でも,腫瘍等の不治の部分と癌性疼痛やうつ状態等の治療可能の部分があります.どんな難病でもYとして複数の病名に分ければ治療できます.


先述の【症例】は◎閉経後骨粗しょう症◎加齢性膝関節症◎糖尿病の治療で良くなりました.老化を中心としたYなのに,絶対の病名を無理につけようとして失敗したのです.


互いに思いやり、絆を大切に


行き詰まらない為に医者は常に精進し,己の立場が人知のどこかを見極め,患者様のニーズを①自院で対処②他院と連携③無理な要求として建設的に指導,の3群に分けます.


患者様は「病名は?原因は?」と担当医を問い詰めたり,病名を明言しないからといって使い捨てるのは無益です.怒りを込めて唯一絶対の病名や治療法を求め続ければ,どんな病院でも診療不能となります.相性の良いかかりつけ医に継続受診し,上記の3群を見極め,必要に応じ専門医を紹介してもらいましょう.絆があれば,どんな状況でも道は開けます.


ほどほど,コツコツでだいじょうぶ


日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.