アトピー性皮膚炎


どんな症状?

かけばかくほど,かゆくなります.ジュクジュクした湿疹をかきつぶすと,赤紫にはれあがり,服がすれるだけでも激しくかゆみます.

虫刺され,カブレ,寒暖差,蕁麻疹,花粉症など,ささいなことで再発します.

軟膏などをキチンと使わないとガサガサにこじれ,きっかけがなくとも年中かゆい状態になります.

●何で気がつくの?

上記の症状ですぐにわかります.虫刺されのあとがなかなか治らないのも特徴です.

赤ちゃんの頃,アセモやカブレと思われた湿疹が,育つにつれ,ひどくなり気付きます.

●放っておくと?

ひどいかゆみで常にかきつぶし,ご本人ご家族ともにストレスがたまります.けんかになることもしばしば.

はだを人に見せたくなく,しかも服がすれるのもいやなので,綿でダボダボの長いものを選ぶようになります.ファッションが制限され,人目を気にするようになり,外出や友達付き合いが少なくなります.いつしかうつになり,生活がままならなくなることもあります.

お子さんは引っ込み思案になり,のびのびと成長できず,明るい青春をおくれません.

どんな検査?

かゆみや湿疹などの皮膚の症状でほぼ診断できます.

かゆみがない状態でも,首や肩,ひじやひざのやわらかいところがザラつくアトピー用皮膚 (atopic skin)を触れます.

他のアレルギーや内臓の病気などないか,はば広くみてゆきます.

●血液や尿の検査

好酸球数・非特異的IgE抗体:アトピー素因の度合いを調べます.

特異的IgE抗体:杉や卵など,どんなアレルゲンがあるか調べます.

●画像検査

病状により,エコー・レントゲン・MRIなどで内臓疾患の有無を調べます.

●他の病気と副作用をチェック

検査は安心して診療できるようにするためのおまもりです.他の悪い病気がないか,副作用が出ていないかをチェックするのが第一の目的です.

どんな治療?

●一般的な生活改善

アトピー性皮膚炎は,皮膚の乾燥など肌の状態がわるくなりやすく,免疫の異常から外の刺激に影響を受けやすい状態です.遺伝子に組み込まれた体質は変える必要はありません.その仕組みを知り,自分の体質に合った生活をすれば自然と良くなります.

お子さんは二十歳ごろまでに生活のコツをつかめばよく,はだを気にすることなくのびのびと楽しく生活しましょう.ご家族は,お子さんの自主的な成長を,根気強く見守ることが大切です.無理に治療したり,あやしい治療にはしるのは禁物です.

●外用薬

【鎮痒外用薬】

非ステロイド系

ステロイド

カルシニューリン阻害薬(タクロリムス)

【保湿外洋薬】

尿素クリーム

(家庭での)スキンケア・クリーム

※こすりつけず,軽く優しく定期的に塗りましょう.一見症状がないからといって休むことなく,たんたんと続けます.

●内服薬

ロイコトリエン拮抗薬

抗ヒスタミン薬

ステロイド

※背景に他のアレルギーがあるとき.

●注射

ノイロトロピン・グリチルリチン酸・抗ヒスタミン薬・ステロイドなど,重症の発作の時に用います.

神経ブロックは,ひっかきすぎや過度の炎症で神経障害性疼痛に至った場合に考慮します.重症化して自律神経失調症になった時は,他の疾患治療と併行することもあります.

●他の治療

ぜんそくや花粉症,膠原病などの自己免疫疾患が併存することも多く,基本的なアレルギー治療が必要です.

薬が効かない場合,化学物質や気温,任校などの生活環境からの刺激,仕事・家事・勉強・対人ストレスが黒幕のことがあります.きっかけはなんであれ,かけばかくほど悪化します.ひっかかないようにするにはどうしたらよいか?一緒に考え行動しましょう.

コツの例)鎮痒外用薬を常に持ち歩き,虫にさされたらすぐに処置.蕁麻疹がででないようアレルギーのある食べ物・花粉などを避ける.お風呂上りに必ずスキンケア.いやなことがあっても,いじやけてひっかかない.何事も,ひとのせいにしない.

診療のながれ

●しらべる

初診時にほぼ診断はつきます.アトピー素因などの体質を確認し,他の病気を除外するため,検体検査や画像診断をすすめます.

●ととのえる

週1~2回,悪化の誘因を探りながら生活の仕方や外用薬を一緒に考え調整します.

外用薬をやめるタイミングを慎重に見はからいます.

内服を含め併存症をととのえます.

●おちついたら

日頃のスキンケア,運動を軸に規則正しい生活リズム,食事など,ご本人なりのコツに気をつけると落ち着きます.

外来では再発した時の対処と併存症への継続診療が主になります.

他には?

実は筆者も子供の頃ひどいアトピーでした.学生服の布がこすれて太ももに赤紫の湿疹ができ,とてもつらかった.いろいろ試した結果,ただ普通にアレルゲンやストレスを避け,たんたんと治療するのが一番.常に前向きに考え,決して短気を起こさない.それだけで自然と良くなりました.現在は,ハチやブヨにでも刺されない限り再発することはありません.

だいじょうぶ.アトピー性皮膚炎は克服できます.

ほどほど,コツコツでだいじょうぶ