骨粗鬆症
骨を作る細胞とこわす細胞のバランスがくずれ,骨を作るより,こわす勢いが増し,骨が溶け,弱くなり,折れやすくなるのが骨粗鬆症です.閉経・運動不足・寝たきり・ステロイドなどの強いお薬・痛みによる悪循環などが原因です.女性は閉経前後,男性でも高齢になれば誰でもわずらう骨粗鬆症について診てみましょう.
どんな症状?
弱くなった骨が曲がったり,折れて痛むのが主な症状です.主に体重を支える背骨で特に痛みます.しかし,骨のあるところならどこでも痛みが出る可能性があります.
また,骨から溶け出す物質や骨が曲がって周りを傷つけることで,神経痛や自律神経失調症など,いろいろな症状が見られます.
無症状が一番怖い
初めは症状がないため気がつかず,知らない間に骨が弱くなりがちです.ひとたび骨折すると,3ヶ月ほどで傷は治っても骨の変形は古傷として一生うずきます.痛みがゼロになることはありません.
また骨の症状が出る前に,めまい,だるさ,顔が熱くなる,ドキドキするなどの自律神経失調症状や,あせり・うつ状態などの精神症状が見られるため,更年期障害などと間違われ発見が遅れることがあります.
これらの症状は更年期症状と同じなので骨粗鬆症が見逃されることがあります.その他の病気と症状が似ているため間違えやすい病気です.
●何で気がつくの?
健康診断で骨密度が若者の70パーセントを切ったら,もう手遅れ.いつ骨折するか分かりません.骨密度が減る前に,骨が溶ける時期があります.この時気がつくのがベストです.
骨の溶け始めは骨そのものの症状がないので,定期的な検査が必要です.特に女性なら閉経前後(およそ50歳),男性なら高齢(およそ75歳)になって男女問わず強いお薬を使った時,大病やけがをしたときには骨粗鬆症に注意します.
早期発見のため,日頃よりかかりつけ医で診療を受けることが大切です.
●放っておくと?
骨が溶け,弱くなると,骨がゆがむので動き始めの痛みが出ます.骨の痛みをかばおうとして急に力が抜け,今まで通りに動けなくなります.
もっと溶けると,軽く転んだり,重いものを持っただけで骨,特に背骨が折れます.もなかがつぶれるように背骨が圧迫骨折すると,背中が曲がり,数か月激痛が続いた後,身長が縮んで生活が難しくなります.
高いところに手が届かず,低いところの動作もままならない.動く気力もうせ,運動不足になります.動かないので関節が固まり,神経や筋肉が衰えより動きにくくなります.こうして骨粗鬆症と運動不足の悪循環におちいり,最後は寝たきりになります.
どんな検査?
骨が弱くなって骨折したことで診断します.
骨折する前に骨が溶けるスピードを測ることで,骨折する前に診断できます.
●血液や尿の検査
骨代謝マーカー(NTx)で骨の溶けるスピード
骨密度でおおよその骨の量
カルシウムや骨の代謝を血中カルシウム(Ca)や尿細管リン再吸収率(%TRP)などで測ります
貧血・肝・腎機能などの一般的なチェック
●画像検査
院内画像検査
レントゲンで骨折の有無を確認します.
エコー検査
院外画像検査
CT,MRI
●他の病気と副作用をチェック
検査は安心して診療できるようにするためのおまもりです.他の悪い病気がないか,副作用が出ていないかをチェックするのが第一の目的です.
どんな治療?
●一般的な生活改善
運動中心の生活リズムと食事などのバランス.
カルシウムはごく一般的な家庭の食事で十分に必要量を摂取できるので,むしろとりすぎに注意しましょう.
●お薬
ビスホスフォネート(ベネット)
カルシウムが低下した時カルシウム剤,ビタミンD
他の骨にかかわる病気のお薬
●注射
痛みが強い場合は,合成カルシトニン週2回(ラスカルトン)
●他の治療
物理療法(温熱,干渉低周波など)
診療のながれ
●しらべる
レントゲンで骨折を,MRIで骨周辺への影響を見ます.
血液検査で血液中の骨の溶けるスピードを測ります.
●ととのえる
痛みがある時は,週2回合成カルシトニン注射
2~4週ごと:血液や尿の検査などから,
1~2週ごと:症状や生活の様子から,生活改善の仕方やお薬を調整します.
●おちついたら
2~4週ごと:生活改善の確認とお薬.
2~4か月ごと:血液や尿の検査.
半年~毎年:院内画像検査/1~2年ごと:院外画像検査
他には?
健康診断や健康イベントで「骨密度が歳相応なので,大丈夫ですよ」とよく耳にします.これは間違いです.もしそうなら80歳で骨粗鬆症になり骨折して寝たきりになっても,治療しないことになります.あくまで若い人と比べてどの程度減ってるか(YAM値)をみるのが骨密度検査です.
骨の強さを直接測ることは出来ません.その代りに骨密度を測りますが,決め手ではありません.動き始めの痛みがあり,骨代謝マーカーの異常の方が早く診断できることがあります.
骨粗鬆症は万病の元です.早期発見,早期治療.かかりつけ医にご相談下さい.
ほどほど,コツコツでだいじょうぶ
日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.