胸キュン症候群


①明らかな器質的病変がなく
②胸部を中心にみぞおちやのどの症状がある

症状としては
・胸痛:刺すようなものからひりひりするもの,ドンと衝撃をともなうもの
・灼熱感:やけつくかんじ.
・胸苦:むなぐるしさ
・動悸:胸のドキドキ
・恐怖感・心気症状:何かひどい病気じゃないかと不安
・不眠:入眠障害・中途覚醒
・呑酸:むねやけ
・曖気:げっぷ
・梅核気:のどからむねにかけて何かが引っかかったような感じ
・嚥下痛:飲み込むときの痛み
・たん
等多彩です.ひとそれぞれです.

誘引として
・ストレス
・疲労
・天候変化
等があります.

医学的には
・胸部不定愁訴
・心臓神経症
・咽喉頭神経症
・慢性胃炎(心身症)
・心気症
・欝状態
・自律神経失調症
・機能性身体症候群
等の一部がオーバーラップしています.

①の鑑別としては
・逆流性食道炎・消化性潰瘍
・不整脈・虚血性心疾患
・自然気胸・慢性閉塞性肺疾患
・変形性脊椎症・頸胸部神経痛
・縦隔等の腫瘍・明らかな炎症
等が挙げられます.

十代以降の幅広い年齢層で特に几帳面な性格の人に多くみられます.
*除外診断を怠らなければ*多くの場合経過観察のみで寛解します.症状が強い時は,鎮静薬や抗うつ薬等を加えながら,生活のバランスを本人・家族・医師等で考え調整して行きます.医者が気付く前に本人が解決するケースを散見します.
良性の病態なので段階的に診療を継続したいところです.しかし本人や家族があせり病院遍歴を繰り返すことがあります.遍歴傾向が強いほど難治性です.
その原因として
・病名を医者が明言しない~病名がぴんとこない
・症状が横ばい~増悪しているのに医者の対処が同じ
等で心気症状が増し行動化に結びつくことが殆どです.

初診時「いわゆる胸キュン症候群ですね」とお話すると遍歴がとまります.初期の暫定的診断として得心していただける場合が多いのです.胸キュン症候群は自然寛解傾向が強いので遍歴さえ食い止めればいくらでも対処ができます.
臨床医としては身体表現性障害や機能性身体症候群等の網羅的かつ戦略的な概念を胸に秘めつつ,敢えて俗っぽい平易な名前を使うことも一つの方便と考えます.


ほどほど,コツコツでだいじょうぶ

日々の生活をととのえ,コツコツと診療を続けていけばだいじょうぶです.