08.腕神経叢神経痛

痛い部位:腕,手
特異症状:発汗,チアノーゼ,筋肉や骨がやせる
首から肩,腕,手にかけて通るような痛みです.
頚神経の織り成す腕神経叢が関与した痛みの創傷です.
神経ブロックがよく効きます.


外側胸筋神経痛

痛い場所:鎖骨の下,前胸部上部
特異症状:烏口突起の圧痛・放散痛
鎖骨の下の筋肉の痛みがある場合外側胸筋神経痛を考えます.
烏口突起は,肩甲骨の上側の左右ほぼ真ん中のでっぱりです.烏口突起からやや鎖骨よりの部分をおして前胸部に放散痛があればほぼ確実です.
同じ部位の皮膚が痛い場合は,肋間神経痛を考慮します.
神経ブロックがよく効きます.
外側胸筋神経痛 lateral pectoral neuralgia 

肩甲背神経痛

痛い部位:肩甲骨と背骨の間
特異症状:同部位のこり
背中のこりと痛みの代表格です.
皮膚が痛い場合は肋間神経痛や胸神経後枝内側枝神経痛を考慮します.
神経ブロックがよく効きます.
肩甲背神経痛 dorsal scaplar neuralgia 

肩甲上神経痛

痛い部位:肩関節,腕の奥
特異症状:烏口突起内側の圧痛・放散痛
肩関節のしつこい痛みや腕の痛みがある時に考えます.
神経ブロックがよく効きます.
supra scaplar neuralgia 肩甲上神経痛 

腋窩神経痛

痛い部位:肩~上腕外側,脇の下
腕の付け根の痛みがある場合考えます.
axillary neuralgia 腋窩神経痛 

筋皮神経痛

痛い部位:前腕の外側
小腕の親指側が痛いとき考えます.
筋皮神経痛 musculocutaneus neuralgia 

橈骨神経痛

痛い部位:手の甲
特異症状:親指の外側
橈骨神経痛 radial neuralgia 

正中神経痛

痛い部位:手の平
特異症状:人差し指と中指のしびれ痛み,手首の圧痛と放散痛
頚椎疾患や手根管症候群等で起こります.
median neuralgia 正中神経痛 

尺骨神経痛

痛い部位:小指と薬指,手の小指側のしびれ痛み,肘の圧痛と放散痛
頚椎疾患や肘管症候群等で起こります.
肘のぶつけると響くところを押すと手に放散痛がでることがあります.
尺骨神経痛 ulnar neuralgia 

 肘管症候群

 肘トンネルが絞扼し,尺骨神経等を障害する病気.
 肘管症候群 cubital tunnel syndrome 


腕神経叢引き抜き損傷:ペインクリニック治療指針

a.病態と神経ブロックの適応
C5-Th1の前・後根のすべてもしくは一部が脊髄より引き抜かれることにより,上肢の運動麻痺,感覚脱先,自律神経障害などを呈し,感覚が脱失した部分に強烈な痛みが生じる.痛みの発生機序としては,一次ニューロンの引き抜きにより脊髄後角の二次ニューロンへの入力が遮断され,二次ニューロンの興奮性が増して,過剰な自発発射を起こすことが考えられている.
神経根が頸髄から引き抜かれる節前損傷の場合には予後不良で,麻痺の回復は期待できない.痛みに対しては,抗うつ薬,抗てんかん薬,NMDA受容体括抗薬などを用いるが,決定的なものはなく,神経ブロックの効果も一定でない.
b.神経ブロック治療指針
①星状神経節ブロック:治療開始当初は3~4回/週の頻度で約1ヵ月行ない,その後は維持療法として1回/週程度の頻度で行なう.
②頸部・上胸部硬膜外ブロック:引き抜き損傷直後から行ない,十分な除痛をはかる.重症では入院が望ましく,持続法で1~2ヵ月間程度を目安に継続する.
③交感神経節ブロック:星状神経節ブロックあるいは頸部・上胸部硬膜外ブロックの効果が一時的な場合には,神経破壊薬あるいは高周波熱凝固法で胸部交感神経節ブロックを考慮する.
C.手術療法
①胸腔鏡下交感神経遮断術:星状神経節ブロックや胸部交感神経節ブロックの効果が一時的な場合に,より確実性と長期的効果を求めて考慮する.
②その他:脊髄後根進入部破壊術は本症の痛みには効果的であるが,長期予後に関しては検証を要する.他に脊髄,大脳皮質野や脳深部などへの刺激装置植込術があげられるが,その効果は一定ではない.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋
traumatic brachial plexus injury Traumatic avulsion 腕神経叢引き抜き損傷 

腕神経叢ニューロパチー(神経痛性筋萎縮症,neuralgic amyotrophy):ペインクリニック治療指針

a.病態と神経ブロックの適応
原因は多彩であり,外傷,腫瘍,胸郭出口症候群, ウイルス感染,アレルギー性血管炎,遺伝性,あるいは原因不明のものなどが報告されている.呼称も様々で,統一されていない.典型的なものは上肢の疼痛で発症し,続いて急速な筋の脱力と萎縮がみられる.予後は比較的良好で,90%以上が回復するが,少なくとも2年以上の観察が必要である.
治療は非ステロイド性抗炎症薬とステロイドを投与し,疼痛の軽減後早期に可動域訓練を行なう.
疼痛が強い場合は神経ブロックの適応である.
b.神経ブロック治療指針
①星状神経節ブロック:急性期(1~2ヵ月間)は3~4回/週の頻度で行ない,その後は1~2回/週程度とする.
②頸部・上胸部硬膜外ブロック:疼痛が強い場合は入院が望ましく,1ヵ月間程度を目安に持続注入法を行なう.鎮痛不十分な場合は,局麻薬の間欠注入,また慎重にモルヒネ(4~5mg/日)やブプレノルフィン(0.2~0.3mg/日)を併用注入する.
③腕神経叢ブロック:頸部硬膜外ブロックで鎮痛が不十分な場合に1回注入法で,入院では持続注入法で行なう.10日~14日に1回の頻度で3回ほどステロイドを添加する.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋

腕神経叢ニューロパチー brachial plexus neuropathy 神経痛性筋萎縮症 neuralgic amyotrophy